ハウスメーカーの住宅価格はいくら?

2025.07.09

  • 阿部建設の仕事

昨年末2023年度の住宅市場を振り返るというブログで、住宅金融支援機構が発表した2023年度の【フラット35】の指標データをご紹介しました。

今回はハウスメーカーの市場データについてご紹介します。

こちらは、2019年と2023年における各ハウスメーカーの戸建て建築数、全国の展示場数、平均坪単価を比較した表です。

※クリックで拡大画像が表示されます。

ご覧のように、 A社、B社、G社、H社は、年間の戸建て建築棟数と展示場の数を減らして、住宅事業の縮小を図っています。その他のハウスメーカーについても、軒並み棟数を減らしています。

その中で唯一、年間の戸建て建築棟数を伸ばし、住宅事業を拡大しているのがF社です。また、他メーカーの5年間の平均単価上昇率が15%以上となっている中、F社は10.3%に抑えています。これは受注の主力になりつつある『セミオーダープラン』が影響していると言われています。

F社が提供するセミオーダー型の注文住宅は、1000を超える間取りの中からお気に入りを選び、自分だけのこだわりをオーダーで加える独自の商品です。 実物を体感する展示場はなく、フルオーダーと比べると価格も抑えることができます。

「自由設計までではないけれど、暮らしに合った間取りや、設備・仕様にもこだわりたい」そんなセミオーダー(型式適合認定)に魅力を感じたユーザーとマッチし年間棟数を唯一伸ばしたと言われています。

では、大幅に建築数、展示場数を減らしたハウスメーカーはどのような戦略をとっているのでしょうか?

ズバリ「1棟当たりの単価を上げる」という戦略です。

各メーカーは5年間で23~38%程度、1棟当たりおよそ5,000万円弱~5,200万円まで価格を引き上げており、建築数を減らした分、1棟当たりの単価を増やすことで売り上げの維持を図っています。

(D社、E社は1棟あたりの住宅価格が上がってないように見えますが、分譲住宅へシフトを図っており、注文住宅のシェアを減らす戦略です。)

ここで重要なのは、どのハウスメーカーも「自由設計」というキャッチコピーの家づくりから、セミオーダー(型式適合認定)や分譲住宅にシフトしてきているということ。昨今の物価高や人手不足などの影響により住宅価格が上昇し、少しでも価格を抑えたいという消費者の思いが反映されているのでは?と感じます。

では、型式適合認定を外したいわゆる『完全自由設計』『フルオーダー住宅』を建てようとした場合、一体いくらぐらいになるのでしょうか?

なんと、1軒あたりの坪単価は250万円以上になると言われています。比較的価格を抑えられるセミオーダー(型式適合認定)でも、1軒あたりの坪単価は120~150万円です。(平均坪数で坪単価を算出)

つまり、ハウスメーカーで『フルオーダーの住宅』を建てようと思ったら、それなりの予算を見積もっておく必要があります。

そして「フルオーダー住宅=高単価=富裕層向け」として各社さまざまな商品を打ち出しています。

例えば、A社が発表した東京・大阪・名古屋を中心とした都市部の富裕層向けの商品は、165万円~/坪(税込)※付帯工事費・諸費用等別。

H社の富裕層向けの戸建住宅は、参考価格は150万円/坪。

F社は、販売価格6,000万円以上の受注棟数を2014年と比べ3倍に伸ばすなど、各社フルオーダー住宅の高単価商品にも力を入れています。

好きな素材や間取りを一から選んで建てたい方、決められた選択肢から好みのものを選んで建てたい方、家づくりに対する考え方はさまざまです。

でももし、『フルオーダー住宅』を建てたいとお考えの方は、ぜひ工務店も選択肢の一つに入れてみてください。

単純な坪単価〇〇万円ではわからない、満足度の高い“コスパの良い住宅”が叶うかもしれません。

安価で均一な住宅供給を目的としているハウスメーカーの量産住宅ですが、物価高や人口減少、空き家問題などを背景に、その価値は失われつつあるように感じます。

住宅に求めるものが多様化していく中で、今後どのような方向にハウスメーカーが進んでいくのか、建築業界に携わる一人として注視していこうと思います。