NHKスペシャル あなたの家が危ない 〜熊本地震からの警告〜
2016.10.10
- 阿部建設の仕事
昨夜NHKスペシャルで「あなたの家が危ない 〜熊本地震からの警告〜」が放映されました。
木造住宅に対し、少し誤ったイメージを受ける方々もおられる可能性を感じましたので、本日ブログを更新しました。
熊本県益城町で建てられた最新の耐震基準の建物、130棟余りの内17棟が全壊又は半壊しました。
これは何を意味するのでしょうか。
私は阪神淡路大地震、東日本大震災、熊本地震など地震が起こるたびに、現地を訪れて被害状況などを確かめてきました。
東日本大震災の被災地訪問は毎年行っています。
被災地を訪れる度に学ぶことが多く、お客様の家づくりや施設建築に活かしてきました、
建築基準法もこれらの地震に呼応して基準が見直されてきました。
しかしながら番組でも取り上げられていた壁の直下率という問題だけではありません。
ポイントはまず、大きくみて二つあります。
一つ目は建築基準法はそもそも大地震に対し、命を守ることを主な目的としている点です。
熊本地震で起きたような、震度7 2回、震度6 1回の地震で、建物がほぼ無傷で建っていることを想定していないのです。
この件は番組ではコメントをしていませんでした。
事実、1回目に起きた震度7の時、先に述べた17棟のほとんどがほぼ無傷で建っていたと聞いています。
倒壊又は半壊した17棟のほとんどが、その後におきた2回の震度7の本震により壊れました。
分かりやすく述べると、1回目の震度7の地震の時には壊れずに人命が守られ、非難できた訳です。
これは最新の建築基準の目的を満たしていることになります。
二つ目のポイントは、繰り返し大地震が起きても「住み続けられるか?」という点です。
先ほどの話を例にすると、130棟余りの内、110棟は住み続けることが可能ということになります。
つまり、大地震が繰り返し起きたとしても、軽微な修復で暮らすことが可能な住宅も多々あるということです。
ここからは、その違いがなぜ起きたかを書いてみたいと思います。
まずは、技術的な面として番組では壁の直下率と地域係数について解説していました。
地震における住宅の必要耐力は、その二つの要素だけではなく、下記にそれとは別に検討すべき項目を記し、阿部建設がどうしているのかも書いてみました。
①直下率
実は建築基準法には1階と2階の壁や柱位置が一致する直下率という言葉はありません。
しかしながら、阿部建設においてもそうした直下率の考えは10年以上前から設計(設計ルールBook)に取り入れていますが、構造に意識の高い会社は当然のように壁や柱位置を合わせる設計にしています。
②地域係数
番組では地域係数と呼ばれる、地震の発生確立により地域で係数を定め、建築基準で1.0必要なところ、0.7まで耐力を減らすことができるようになっていることを紹介していました。
東海地方では東南海地震の発生確率が高いため、軽減係数は用いられておらず、1.0で計算します。
③性能表示
建築基準法は先にも述べたように、人命を奪わないことを目的としているため、阿部建設の認識としては最低限の耐力と考えてきました。
建築基準法とは別に、性能表示と呼ばれる基準が2000年から定められ、運用されています。
こちらの基準では建築基準法レベルを耐震等級1と定め、建築建築基準法の1.25倍を耐震等級2、建築建築基準法の1.5倍を耐震等級3としています。
阿部建設では熊本地震で被害を受けた工務店の建物を実際に熊本に赴き、見てきました。
耐震等級3に加え、高い直下率を採用した住宅を建てている工務店です。
軽微な被害がほとんどで、益城町に建てられていた住宅も住み続けています。
阿部建設はこれまで耐震等級2+制震ダンパーを使い、耐震等級3に近い耐力で設計し、提案してきました。
これは耐震等級3とした場合、性能表示1→性能表示2とした場合の性能差に比べ、性能表示2→性能表示3の性能差が小さく、開放的な間取りを好むお客様が多く、間取りにも影響が出ることが避けけられないことからでした。
耐震等級2+制震ダンパーとした理由として、制震ダンパーの特性をいかすのに良い面を重視したことも耐震等級2+制震ダンパーとしていた理由の一つです。
熊本地震を受け、阿部建設では耐震等級3+制震ダンパーとしました。
制震ダンパーの特性をいかすことが少し減退しても、耐震等級3とした方がよりお客様にわかりやすいと判断したためです。
④四号特例・構造計算
木造住宅を建てる場合、四号特例と呼ばれる壁量計算が認められています。
この四号特例は平面の面積から必要な壁量(長さ)が導き出され、それをあるルールに従って平面図上に壁量として配置すれば、偏って耐力壁が配置されていたり、必要な柱・梁断面、直下率などを考慮する必要がなく、建築基準法に合致した住宅の確認申請を行うことが可能になります。
構造的な知識が少ない建築士でも、必要壁量さえ配置すれば特別な構造計算を行わなくても設計が可能なようにしています。
詳しい数字はデータがないためわかりませんが、この四号特例で建てられている木造住宅が全体の90%以上を占めていると思われます。
この特例が、今回の「住み続けられるか」 「倒壊又は半壊に至った」を分けた最大の原因だと私は考えます。
つまり、住宅のほとんどが構造計算を行っていないのです。
これは先に述べた性能表示の耐震等級2や3でも同じことです。
1.25倍、1.5倍と、必要壁量を多くしているだけで、構造計算を行っていないのです。
阿部建設は全棟許容応力度による構造計算を行って、柱や梁の必要断面や必要金物などの確認をしています。
四号特例は、誰もが簡易に設計できることを容認しているため、ある程度の余力があり、安全性に問題がないとおっしゃる建築関係者は少なくありません。
しかしながら、実際に許容応力度で構造計算を行うと、柱や梁の断面不足が生じます。
四号特例では全くこうした点は、問われません。
単に、壁量(長さ)だけを充足していれは基準をクリアーではきます。
阿部建設は四号特例を使わず、全棟許容応力度による構造計算を行っています。
⑤剛心・重心
建物のバランスを考えると、剛心・重心と言った考え方があります。
剛心・重心も建築基準法にはない考えです。
力の集まる中心点を剛心と言い、建物の重さの中心を重心と言います。
この2点が近いほどバランスの良い建物と言われています。
このあたりを阿部建設では注意をはらい、設計に取り入れています。
⑥地盤
建物の耐力の話を言う以前に、地盤について検討をする必要があります。
がけ地や造成されたよう壁上に建てられる住宅は注意が必要です。
また平地に建てられる場合でも、その地域がどんな地層になっているか。
かつてどんな地域であったかなど、古地図と呼ばれる古い地図と比較することも重要です。
また液状化と呼ばれる現象も近年言われるようになりました。
東海地方は濃尾平野と呼ばれる地域に属しており、阿部建設では半数以上のお客様が何らかの地盤補強をされて建設をされているのが現状です。
阿部建設では古地図との比較や地盤調査を事前に行い、適切な基礎設計に反映しています。
万が一の事態に備え、第三者機関による地盤保証もしています。
余談ですが、土地購入を希望されているお客様がおられた場合、阿部建設では土地契約をされる前に地盤調査を行うことをお勧めしています。
売主や仲介業者の理解がないとこうしたことは行えませんが、ほとんどの場合で受け入れてくれます。
こうした場合に対する備えをまとめた「土地購入される方々へ」パンフレットが用意されていますので、ご興味のある方は営業設計スタッフにお問い合わせしてください。
大変長いブログとなりましたが、ここまで読んで下さりありがとうございました。
ここにあげたのは、私たち阿部建設が考える構造に関する一部の部分に過ぎません。
2000年頃から頻発する各地で起きる大地震。
日本は地震期に入ったとも言われており、お客様にどのような住宅を提供すべきか日々検討を行っています。
木造住宅=地震に弱い と言うことは過去の話です。
現在の基準を正しく守れば倒壊どころか、大地震が起きても、住み続けることが可能です。
阿部建設は1棟異なる敷地条件や、お客様要望に答えつつ(基本価値)、快適で楽しい暮らし(感性価値)のできる住宅・施設建築をこれからも設計、提案していきます!
最新の耐震技術で建てられた阿部建設新モデルハウス「手しごとの家」・本社 新ショールームへ是非おいでください。