新建ハウジング 2026/7/23 発行Vol.1073 掲載 『工務店が地域で選ばれ続けるためのバリアフリー住宅 vol.6』
2026.08.06.Thu
- メディア情報
全国の地場工務店を応援する住宅業界情報誌『新建ハウジング』にて、社長・阿部一雄の連載「工務店が地域で選ばれ続けるためのバリアフリー住宅」が掲載されています。
本連載では、事故をきっかけに車いす生活となった一級建築士であり、地域工務店経営者でもある阿部一雄が、自らの当事者としての経験、設計者としての専門性、そして経営者としての視点を重ね合わせながら、「本当に暮らしやすいバリアフリー住宅」とは何かを掘り下げます。
第六回は、原点となったバリアフリー改修 〜実情と思いを把握、家族全員のADL・QOL両立の道筋を探る〜 事例編その2です。
ADL(日常動作)を高め、「安全で楽に」を実現
20年以上前のこと。
阿部一雄が車いす生活になり、初のバリアフリーによる自宅改修の依頼がありました。
依頼者は仲良くしている工務店のオーナー家族でした。
当事者の息子さんの通う病院からは、
「既存の玄関の間口を広げ、1階リビング横の和室を仕切って息子さんの部屋にし、浴室やトイレ、洗面も全て広くして、1階で生活は完結するように改修してほしい」
という要望が出ていました。
それをまるっと受け入れることもできたが、阿部一雄が一番にしたことは“先入観なしに息子さんとご両親と膝を交えて話を繰り返すこと”です。
息子さんの状態の確認と既存住宅の状況、家族の思いや不安をじっくり読み解くことでした。
そこから導き出したのは、1階に大幅な改修が不要なことです。
事故前から使用していた2階の自室に戻るために、ホームエレベーターを設置することにしました。
なぜこの選択肢を取ったか。
それは、障害を負う前の生活に戻れる“現場復帰”は、その人の暮らしやすさだけでなく、人生にとって非常に大きな意味を持つからです。
「玄関の間口を広げること」病院からのアドバイスは、建築的観点からすると耐震性の確保に問題があり、かなりのコストを要します。
そのため、阿部一雄はバリアフリー用の「もうひとつの玄関」を設けることにしました。
QOL(生活の質)を高め、「心のバリアを解きほぐす」
さらに、ご両親と話を重ねる中で、わかったことがありました。
それは、お母様の自宅で開いていた「料理教室」。
週に数回生徒さんを迎え、授業後は和室で談笑する時間があり、その時間はお母様の生きがいそのものでした。
その和室というのは、病院から提案された「新しい息子さんの部屋」です。
お母様は、「息子のため」と改修を覚悟されていました。
しかし、阿部一雄はそれが積み重なった時、本人さえ自覚のない潜在的な不満の種になっていくと直感しました。
息子さんは、和室が自室となれば家族の動きを常に感じ、「母の楽しみを損なってしまった」という罪悪感につながりかねません。
こうした潜在的なストレスの芽をあらかじめ摘み取ることを大切に組んだプランでした。
もちろん病院側の指導や助言も間違っていません。
しかし、患者の安全確保と家族の介助のしやすさが最優先事項となりがちです。
それはとても大切なことではありますが、住宅で家族が毎日を幸せに豊かに暮らしていくことの実現は難しくなります。
一方、工務店にしても障がい者の実態や本物のバリアフリー住宅への知識やノウハウが不足していては、実現が難しいです。
そのため、医療・福祉と建築、両方の視点を兼ね備えた本物のバリアフリー住宅の設計メソッドと実現ノウハウを実装することは、社会にとって大きな意味を持ちます。
「障がいを負った本人だけでなく、一緒に暮らす家族も含めた心のバリアを解きほぐす」こと、これこそがバリアフリー住宅を設計する上で最も大切なことだと、改めて阿部一雄は言います。
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