新建ハウジング 2026/6/30 発行Vol.1071 掲載 『工務店が地域で選ばれ続けるためのバリアフリー住宅 vol.5』
2026.07.08.Wed
- メディア情報
全国の地場工務店を応援する住宅業界情報誌『新建ハウジング』にて、社長・阿部一雄の連載「工務店が地域で選ばれ続けるためのバリアフリー住宅」が掲載されています。
本連載では、事故をきっかけに車いす生活となった一級建築士であり、地域工務店経営者でもある阿部一雄が、自らの当事者としての経験、設計者としての専門性、そして経営者としての視点を重ね合わせながら、「本当に暮らしやすいバリアフリー住宅」とは何かを掘り下げます。
第五回は、バリアフリー住宅が人生の背中を押す 〜車いす生活から就職、結婚、マイホームへ〜 事例編その1です。
住環境が整ったことで、社会への扉が開いた
阿部一雄とAさんが出会ったのは十数年前。Aさんが大学4年生だった頃のことです。
卒業旅行の帰り道、事故に遭い、車いすでの生活を余儀なくされたAさん。
将来の夢や就職、これからの人生が大きく変わる出来事だったに違いありません。
当時、Aさんの部屋は2階にあり、医療関係者からは1階への居室移動や浴室を中心とした大規模改修を提案されていました。
しかし、阿部の目には別の可能性が見えていました。
「住み慣れた自分の部屋で暮らし続ける」という選択肢です。
ホームエレベーターを設置し、2階の居室へ戻る。
そして浴室は、Aさんの身体の動きに合わせてシャワー水栓を追加し、浴槽には板を渡して腰掛けながらシャワーを浴びられるよう工夫しました。
その結果、大規模な改修を行うことなく、Aさんは自分らしい暮らしを取り戻すことができました。
この住環境の整備が、Aさんの社会への扉を開く大きな力となりました。
住まいが整うことは、単に生活が便利になることではありません。暮らしへの不安が減り、将来への見通しが持てることで、人は外の世界へ踏み出すことができます。
その後、Aさんは就職し、ツインバスケットボールのチームへ加入。そこで現在の奥様と出会い、結婚。そして、家族との新たな暮らしを築くため、実家の近くに新居を建てることになりました。
「家族みんなが快適に」を第一に考えた新居
新居の設計で阿部一雄が最も大切にしたことは、「バリアフリーでありながら、家族全員が快適に暮らせる住まい」にすることでした。
Aさんのためだけの住まいでなく、奥様、そして将来生まれてくるかもしれない子どもたちも、みんなが心地よく暮らせる場所にーーーー
自然光と風の通り道を確保するために全室を南向きに配置。
奥行きと開放感を持たせる設計にしながら、プライバシーを守れる空間を計画しました。
動線設計は、「一直線」の動線と「8の字」の回遊動線の2つを採用。
車いすの移動において重要となる「切り返し」を減らし、日常の移動を快適にすると同時に、行き止まりのない動線で家事の効率化にも繋がる設計にしました。
玄関はAさん用と、ご家族用の2か所を設置。
車いす利用者にとっては、屋外用と屋内用の車いすを乗り換えるスペースや、屋外用車いすを保管する場所が必要です。
家族と共用する玄関では、時としてお互いの動きを制限してしまうことがあります。
これが潜在的な我慢につながり、長い年月の中でストレスや不満へと変わっていきます。
「目に見えない我慢や不満の芽を事前に摘む、心のバリアを解きほぐす設計」
それこそが、阿部が考えるバリアフリー住宅の真髄です。
真のバリアフリーは、生きる意欲を育てる
Aさんの人生の歩みを振り返るたび、阿部一雄はバリアフリー住宅が持つ本当の意味を再確認すると言います。
安全で快適な住まいは、本人の自立を支え、家族関係との関係を豊にし、社会とのつながりを生み出す基盤になります。
バリアフリー住宅とは、単なる「福祉的対応」ではありません。
そこに暮らす人の人生を豊かにする、本質的な住まいづくりの仕事です。
住宅の設計とは、単に空間をつくることではありません。
そこで暮らす人の人生を支え、未来をつくること。
これはバリアフリー住宅に限らず、家づくりや設計そのものの本質であると阿部一雄は考えています。
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