土壁の家は暮らしやすいのか?

2009.11.21

  • 阿部建設の仕事

「土壁の家は暮らしやすいのか?」と最近お客様から聞かれることがあります。(下記写真は緑区有松地区に建つ古民家を再生した住宅です)

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結果から申し上げますと、いろいろな考え方や住宅を建てる意味・目的により大きく変わると、私は思います。従って暮らしやすいかは、その施主によって異なる訳です。
土壁の家について、「暮らしやすい」という要素だけでなく、他の要素についても、下記に少し述べさせて頂きたいと思います。

私の実家は小学4年生の時に新築された土壁の家でした。
真壁(しんかべ)と呼ばれる、柱が外側からも内側からも見える構造の住宅でした。
屋根は重厚感のある日本瓦の家です。夏は涼しいのですが、冬は隙間風は多く、決して暖かい家とは言えませんでした。

土壁の家は通気性や保湿性、耐火性、リサイクル性など様々な利点が見られ、先にも挙げた通り自身が暮らした家として、身を持ってその「良さ」を体感しています。
しかしながら、土壁の家は現代住宅に要求されている耐震基準や断熱性、気密性などの基準を数値化するには難しい面もあり、長期優良住宅などの補助金対象には至らない場合も見受けられます。

阪神淡路大震災時に炊き出しで訪れた際、多くの日本家屋(古い基準)が傾いたり、倒壊している姿をたくさん見てきました。
更に建築基準法や銀行融資に対応するため、土壁の上からわざわざ断熱材を施す仕様とせざるおえない場合も見られ、土壁の持つ本来の「良さ」を阻害するケースも見られます。
神社の鳥居のように梁や桁が二段になった構造とするなど、昔の建物は構造面で匠の技が見られましたが、今ではそこまでの資金投入をして造ることも難しくなっています。
私は決して土壁を否定しているのではありません。阿部建設も土壁の家を建てます。皆様にわかって頂きたいのは、住宅を建てる場合、何を住宅に求めて建てるかです。
ちなみに、木造住宅の耐震性を計算する仕組みとして「壁量計算」が一般的ですが、他に「限界耐力計算」 「許容応力計算」 「時刻暦応答解析」 や実際に建物に振動を与え、弱い部分を探し出す「振動解析」など、様々な計算方法などがあります。
それぞれの計算方法が正しく、どの計算方法が間違っているとは言えません。
土壁を使った住宅では、「限界耐力計算」や「振動解析」などを用いる場合も見られますが、阿部建設では信頼性の面からこれらの計算方法は使っていません。

阿部建設は信頼性や将来の改修などに備え、全棟「許容応力計算」により構造計算を実施しており、ご覧のような計算結果の厚みとなってしまいます(驚)

先にも挙げましたか、住宅造りで大切なのは、法律や融資、耐震性、断熱性、気密性などの性能面等、利点や欠点を自身の住宅造りに置き換え、正しく理解し、バランスの良い住宅造りを進めて頂きたいと思っています。