とある学生さんとのお話
2024.06.19
- 心のバリアフリー
ある時、Instagramに届いた1通のメッセージ。
「初めまして。突然のメール失礼します。拙い文章ではあるのですが最後まで目を通していただけたら嬉しいです。」
こんな書き出しから始まった、ある高校生の方との交流をご紹介します。
埼玉県の高校に通うSさんからご連絡をもらったのは2年前の冬です。600字超える長文でしたが、丁寧な言葉で綴られた文章がとても印象的でした。
メッセージの内容は「バリアフリー建築」について。
Sさんのお母様は福祉関係のお仕事をされていて、Sさん自身も自然とバリアフリーや福祉に関心を持たれたそうです。しかし、お母様からお仕事の話を聞くなかで、Sさん自身「障がいをもった方はかわいそう」「介護する方は大変そう」と無意識のうちに他人事と捉えフィルターをかけていたそう…。世の中のほとんどの人はそう考えますよね。
しかし、Sさんのお母様はただ単に「大変そう」という感情を持つのではなく「困っている人に自分は何ができるのか」を親身になって考えており、そんなお母様の姿を見てSさん自身も将来困っている人に寄り添い、一緒に考えられる人になれたらと思ったそうです。
また「パーフェクトワールド」を見たことで、建築にも興味を持ったとのことでした。一つひとつを深く考え妥協せずに建築に取り組む姿に感動し、将来バリアフリーに強い建築士になりたいと強く思うようになったそうです。
今回連絡をいただいたのは、パーフェクトワールドのモデルになった私から、バリアフリー建築に詳しい先生やバリアフリー建築を学ぶにあたっての話しを聞きたいとのことでした。
現在、建築と福祉の両方を学べる大学は愛知県にある日本福祉大学しかありません。日本福祉大学には、「健康科学部 福祉工学科 建築バリアフリー専修」という専門の学科があります。他の大学の建築学科ではバリアフリーや福祉介護の授業は僅かです。しかし、専門の学科はなくとも全国には、バリアフリー建築や介護福祉に詳しい先生、研究室がありますので、少し広い目で見て大学を探されてみてはいかがでしょうか?そんなアドバイスをつらつらと書き、返信しました。
とても喜んでいただき、またお話しできたら…。と一旦は終わったのですが、その9ヶ月後にSさんからこんなメッセージをいただきました。
「その後自分の夢に近づくことができるのではないかと思える大学を見つけることができました!」
大学合格の一歩手前まで進み名古屋に会いに来てくれるとのことで、昨年10月直接お会いすることができました。わずかな時間ではありましたが、モデルハウスも見学してもらいたくさんの話しをしました。
そして後日、Sさんから大学合格の報告をいただきました。
お会いした時に話した内容や資料が参考になったそうです。しかし私はほんの少し自分のことや業界のことをお伝えしただけ。Sさんの強い想いが伝わり成果となって現れたことがわかり、とても嬉しくホッとしました。
バリアフリー建築に興味がある方は、まだまだ少ないかもしれません。しかし、建築士が福祉にもっともっと関わっていけば社会は大きく変わります。
今回勇気をもって連絡をくれたSさんのような学生がいることは、大変心強く、またバリアフリー建築においてひとつの希望でもあります。
今度は仕事仲間としてSさんに会えることを楽しみにしています。