新建ハウジング 2026/5/10 発行Vol.1066 掲載  『工務店が地域で選ばれ続けるためのバリアフリー住宅 vol.3』

2026.05.13.Wed

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全国の地場工務店を応援する住宅業界情報誌『新建ハウジング』にて、社長・阿部一雄の連載「工務店が地域で選ばれ続けるためのバリアフリー住宅」が掲載されています。

本連載では、事故をきっかけに車いす生活となった一級建築士であり、地域工務店経営者でもある阿部一雄が、自らの当事者としての経験、設計者としての専門性、そして経営者としての視点を重ね合わせながら、「本当に暮らしやすいバリアフリー住宅」とは何かを掘り下げます。

 

第三回は、カギを握る設計プロセス。必要・不要の判断軸を持ち“予防的バリアフリー”の実践についてです。

 

暮らしの実態を捉えるヒアリングと「本当の課題抽出」


バリアフリー住宅の設計では、ヒアリングの質がそのまま設計の質に直結します。

単なる要望整理ではなく、生活動線、日常の不満、家族の役割分担といった実態を丁寧に把握する必要があります。

その中でも特に重要なのが、住まい手自身も気づいていない「小さな不便・我慢」を現地確認によって掘り起こすことです。

阿部は、ヒアリングを行ったのちできる限り現地を訪れ、本人や家族と一緒に、図面上ではわからないような想定外を確認するようにしています。

それが、具体的な課題が自然と浮かび上がり、実際に使いやすい住まいのプラン・設計につながっています。

これらの情報を整理する際に大切なのが、「何を残し、何を削るか」の判断力です。

バリアフリー設計は「すべてを広く・すべてを安全にすること」が最適解ではありません。

過剰な改修はコスト増だけでなく、住み慣れた環境の喪失にもつながるため、必要性の見極めが非常に重要となります。

 

 

将来変化に備える「予防的バリアフリー」という設計思想


バリアフリー住宅においてもう一つ重要な視点は、将来の身体状況の変化を前提とした設計です。

多くの場合、身体機能の低下は段階的に進むため、初期段階から完全なバリアフリー化を行うのではなく、将来の対応余地を残すことが合理的となります。

その考え方が、「予防的バリアフリー」です。

例えば、手すり設置箇所への下地補強や廊下幅の余裕確保など、設備更新時に車いす対応へ転用できる空間設計があげられます。

これにより、初期コストを抑えながら、必要時に柔軟な対応が可能となります。

このような設計は、住まいを一度で“完結”させるのではなく、暮らしとともに更新していくものという考え方であり、結果として長く住み続けられる住宅につながります。

 

何より、最終的に設計者に求められるのは、ヒアリング情報、現地調査、医療・介護の知見、家族の生活スタイルなどを整理し、「実際に成立する生活空間」へと落とし込む力です。

図面は単なる形状の指示書ではありません。住まい手の人生や将来の可能性まで含んだ表現です。

 

バリアフリー住宅の設計は、ヒアリング力・判断力・将来を見通す思考力を同時に鍛える実践の場であり、「必要と不要の見極め」と「将来への余白設計」が、本物のバリアフリー住宅を実現するための本質となります。

 

高齢化社会が進む昨今、バリアフリー住宅は特別なものではありません。住まい手と家族の人生を見据え、その人らしい暮らしを支える設計思考の表れだと阿部一雄は考えます。

 

 

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